恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。


「変わる勇気さえあれば、いつだって自分が望むモノになれるんだそうです」

私もまだ、その勇気を持ててはいない。

だけど、変わりたい自分を見つけたその時は、その勇気を振り絞ってみようとは思う。


「在田先輩、進学校に進むことは、本当に先輩の夢ですか? 今も悔いるほど、大事なものだったんでしょうか?」

「それは……それ、は……」


ためらうように言葉を濁らせる在田先輩。

それだけで、答えは『否』だということがわかった。

言いよどんでいた彼は私の目を見た途端、「いや……」と呟いて、そして──。


「たぶん、違うと思う」


首をゆるゆると横に振り、在田先輩はハッキリそう言った。

あらかじめ用意された道でも、奪われると途端に心細くなるものだ。

彼も言葉にしてすぐに、不安げに瞳を揺らしている。

枠の外、模範から飛び出すことは、なにが正解で不正解なのかがわからなくて、失敗するのが恐ろしくて、躊躇ってしまう。

それは私も同じで、だから完璧になろうとして、両親の示した道を捨てきれないのかもしれない。


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