恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「俺が進学校に落ちてここにいる事にも、なにか意味があんのかな……」
まるで救いを求めるように、在田先輩は雅臣先輩を見た。
そんな在田先輩の不安を、雅臣先輩はやわらかな笑顔で受けとめる。
あ……あの時と同じだ。
私が居場所を求めて古典研究部にたどり着いた時、雅臣先輩は今みたいに笑顔で私を受け入れてくれたんだ。
「それを、これから一緒に見つけていかないか」
「……え、一緒に……すか?」
在田先輩は瞬きを繰り返しながら、どういう意味だと首をかしげる。
「在田……いや、業吉。お前がどんな人間でも、俺は責めたりしない、ありのままを受け入れる」
あぁ、この言葉だ。『ありのままを受け入れる』、それは空っぽの私を救ってくれた魔法の言葉。
世界中に溢れるたくさんの言葉の中で、私も在田──業吉先輩も、きっとこの言葉を待っていたのだと思う。
「だから、今日からお前も古典研究部に入れ」
「あ……」
みるみる業吉先輩の瞳が見開かれて、ぽろりと雫が落ちる。
その表情に映るのは、どこか許されたような、安堵したような感情のように思えた。