恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
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【タイトル:禁断の恋に溺れて】
著者:紫
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時は平安、貴族は蹴鞠や和歌を詠みその人の教養を推し量る時代。
紫式部はそれられに長け、社交界ではもてはやされ──。
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冒頭を読み、これがなにかのネット小説だということがわかった。
なにより引っかかったのは、著者の名前だ。
紫は物部さんの名前で、ということはつまり──。
「え、物部さん!?」
この小説、物部さんが書いた作品ってことだよね?
スマホ画面と物部さんの顔を交互に見る。
しかし彼女はずっと俯いており、真実はわからない。
女子のひとりが黙り込んでいる物部さんをチラリと見て、私の隣に並ぶ。
「小泉さん、これ物部さんだよ。マジ衝撃だよね!」
「物部さんさ、自由投稿できるネット小説で、こんな恥ずかしいタイトルの話書いてるんだよ?」
私の肩に手を置いて、女子たちは意地悪い笑みを口元に貼り付けたまま遠まわしに物部さんを罵倒する。
……そういうことか。
教室で小説を書いてる物部さんを見つけた女子が、面白がってからかってるんだ。
いや、からかってる域を超えてる。わざわざこんなところに呼び出したりして、誰がどう見てもイジメだと答えるだろう。