恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「ふたりと出会ったから、こうして本当の自分を出せるようになったんだと思います」
こうして話していて驚いた。
私は人との会話も楽しめるし、自分が思っていたよりも明るい人間らしい。
今まで両親からは無駄なことはするなと、放課後に塾や家庭教師を付けられて、遊びにも行かせてもらえなかった。
だからなのか、自然と必要か不必要かで物事を見るようになっていた。
そんな私を変えたのは雅臣先輩だ。
こうして誰かと言葉を交わして、好きなものを共有する時間というのは心を豊かにするために大事な事だ。
私が明るくなったのなら、そういう大切なモノに気づけたからなのだろう。
「ふたりが生き生きしている姿を見るのは、俺もうれしいぞ」
雅臣先輩は、本心からそう言ったんだろう。
時折見せる悲しい笑顔じゃない、あの陽だまりのような笑顔をしていたから。
その顔を眺めていたら、ふと今朝の出来事が頭に蘇る。
そういえば、雅臣先輩に聞きたいことがあったんだった。
「雅臣先輩、朝はどうして最寄りの1本前の駅で降りたんですか?」
ひと駅とはいえ、かなり距離がある。
徒歩では到底無理だし、あそこからバスでも出てるのだろうか。
いや、高校の最寄り駅からだってバスは出ているのだから、やっぱりわざわざ降りる意味がわからない。