恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「朝って、なんの話だ?」
「……はい? もう忘れちゃったんですか?」
その若さで、記憶力が衰えてるなんてことないよね。
でも本気でわからないのか、雅臣先輩は笑顔を貼り付けて乗り切ろうとしている。
「しっかりしてくださいよ、雅臣先輩! 私と電車で会ったじゃないですか!」
「電車で?」
うそでしょう、それも覚えてないの?
あの人がそっくりさん……なわけないし。
制服だって私と同じ灰色ブレザーに白ワイシャツ、ネイビーのズボンだった。
ネクタイやリボンは自由着用なので、雅臣先輩が付けていなくてもおかしくはない。
「いつもは自転車登校だけど、雨が降るから電車にしたって言ってたじゃないですか!」
「──あ、あぁ」
そう言った途端、雅臣先輩の顔は明らかに青くなった。
え、なに……?
ドクリと、心臓が嫌な音を立てる。
なんとなく、なんとなくだけれど──。
私はまずいことを聞いてしまったのかもしれない。
根拠はないが、そんな言い知れない不安に襲われた。
「おい、雅臣先輩どうしたんすか?」
業吉先輩も異変に気づいたのか、隣に座る雅臣先輩の顔を心配そうにのぞき込んだ。
そんな私たちの視線に気づいた雅臣先輩は、ハッとしたような顔をする。