恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「あ……実は途中でトイレに行きたくなって、やむおえず途中で降りたんだ」
「…………」
取り繕うような笑顔で語られる言葉たち、目の奥に浮かぶ戸惑い、抑揚の薄れた声。
それらすべてが、こう告げている。
……ぜんぶ、嘘だ。
だって、あの時の雅臣先輩は慌てている様子なんて一切なかった。
トイレに行きたい人間が、あんな穏やかな顔で会話できるとは思えない。
雅臣先輩は、最初から降りるつもりだったはず。
それをどうして、隠そうとするのだろう。
「──ほら、早く食べないと昼休みが終わるぞ」
だけれど、雅臣先輩はそれ以上を聞いてほしくなさそうに、話題を逸らす。
だから私もそれ以上、追求する事をためらってしまった。
納得いかない気持ちで残りのおにぎりを口に運びながら、聞くタイミングを完全に失ってしまう。
その後に予鈴も鳴ってしまい、モヤモヤした気持ちを抱えたまま昼休みは終わってしまった。