恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
放課後、やっと部活に行けると思った私は「うーん」と大きく伸びをして、鞄に教科書をしまっていく。
「えーどれどれ? 私たちは身分が違いすぎます?」
「決して、結ばれない仲なのです──ギャハハッ」
どこからか、三次元には似つかわしくない言葉が聞こえてきて、私は鞄から顔を上げる。
その時、隣に座っている物部さんの肩がビクリと震えたように見えた。
もしかして、今のは物部さんの小説の話?
ネット小説だから、名前を検索すればすぐに見つけられる。それを見て、面白おかしく話題にしているんだろう。
ふいに、雅臣先輩の言葉が脳裏に蘇る。
『うまく生きようとすることは、時に自分を殺すのかもしれないな』
誰かの夢をネタにして、平然と笑っているクラスメートを見ていて思う。
たったひとつの夢に向かう姿が、このクラスの人間にはバカバカしく映るのかもしれない。
それに屈して、物部さんには自分らしさを殺してしまわないでほしい。