恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。



放課後、やっと部活に行けると思った私は「うーん」と大きく伸びをして、鞄に教科書をしまっていく。


「えーどれどれ? 私たちは身分が違いすぎます?」

「決して、結ばれない仲なのです──ギャハハッ」


どこからか、三次元には似つかわしくない言葉が聞こえてきて、私は鞄から顔を上げる。

その時、隣に座っている物部さんの肩がビクリと震えたように見えた。


もしかして、今のは物部さんの小説の話?

ネット小説だから、名前を検索すればすぐに見つけられる。それを見て、面白おかしく話題にしているんだろう。

ふいに、雅臣先輩の言葉が脳裏に蘇る。

『うまく生きようとすることは、時に自分を殺すのかもしれないな』

誰かの夢をネタにして、平然と笑っているクラスメートを見ていて思う。

たったひとつの夢に向かう姿が、このクラスの人間にはバカバカしく映るのかもしれない。

それに屈して、物部さんには自分らしさを殺してしまわないでほしい。

< 86 / 226 >

この作品をシェア

pagetop