イジワル部長と仮りそめ恋人契約
「ホテルに宿泊はないけどな。このあと、もう1箇所だけ付き合ってくれる?」



車のエンジンをかけながら言われ、若干戸惑いつつもうなずいた。

走り出した車は駐車場を出て、夜の街を抜けていく。

そうしてたどり着いたのは、小高い丘を登ったところにある小さな公園だった。



「うわぁ……っ」



先ほどフレンチレストランに足を踏み入れたときと同じ、いや、それ以上の感嘆の声が漏れた。

前にある柵へと手をかける。眼下には、住宅やビルの明かり、車のライトが作り出す鮮やかな夜景がぐるりと広がっていた。

すごく、綺麗。このあたりに、こんな素敵な場所があったなんて。

後ろからやってきた悠悟さんが、私の右隣へと並ぶ。



「こっからの夜景、なかなかだろ? 穴場なんだ、この場所」

「すごいです……とっても、綺麗」

「お気に召していただけましたか? お嬢さん」



またしてもそんなふうにおどける彼に、私はふはっと笑う。

両手を腰にあて、わざと偉そうに胸を張った。



「うむ。褒めてつかわす」



そうして顔を見合わせ、互いに自然と笑みをこぼす。

ふと、悠悟さんが私の耳もとにくちびるを寄せてきた。



「けど、残念。今日は珍しく先客がいたな」



そうして彼の視線の先を追ってみると、たしかに、私たちから数メートル左に行ったところに1組の若いカップルの姿があった。

ふたりは身体を寄せ合い、何やらくすくすと笑いながら仲睦まじく小声で話をしている。
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