好きの海に溺れそう
「どっか行くの?」

「うん。海琉の買い物に付き合うの」

「そっか。いってらっしゃ~い」



学校では、あたしと海琉は2人でいると冷やかされることが多くてちょっとめんどくさい。



だけど、玖麗も悠麗もこれが日常茶飯事だから、あたし達が2人でいても何も思わないのがとても居心地が良い。



海琉と一緒に家を出た。



それから電車に乗ってあたしイチオシの雑貨屋さんまで。



「どんな子?」

「ふわっとした子。玖麗をさらに柔らかくした感じ?」

「ふ~ん」



海琉の話を聞きながら、立ち並ぶ商品を眺める。



「だったらその子、こういうの好きなんじゃない?」



あたしはそう言って、小さいガラスの石がキラキラ光る小ぶりのピアスを海琉に見せた。



「あ、好きそう」



ていうかあたしが欲しいわ。



まあ別にいいですけど…。



「これ、杏光も好きそうだよね。今欲しいとか思ったでしょ」

「さすが海琉~。あ、このパンプスかわいい!」

「杏光好きそう」

「好きだよ。買って」

「え゛」



絶句する海琉を笑ってやった。



「嘘だよ」



そう言うとほっとした表情。



「なんだ。今そんなお金は持ち合わせておりません」

「むかつく。海琉のくせに。だいたい今日はあたしはあんたのために大事な休日を割いてやってんのに」

「あーはいはいはい。あとでお昼奢る」

「あっ本当? やった」



たくさん注文してやろう。



このパンプスくらいの値段で。
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