・キミ以外欲しくない
「ボケッとしていないで入れ」
手招きされ、小走りに駆け寄る。
既にドアは開けられていて、顔を覗かせると室内に続く廊下は、既に点灯しているライトに照らされ明るくなっていた。
「ここって……」
「俺の部屋だ」
副社長の部屋?
ちょっと待って、どうして私が副社長の部屋に上がるの?
分かんない、分かんないよ。
警戒心も無く、何にも考えずに副社長についてきてしまったことを、早くも後悔している私に、先導し前を歩いている副社長が言った。
「君に部屋を用意する。一室を君に開放するから、好きに使うといい。家電も備品も、この部屋にある物は好きに使え」
「今、なんと?」
私にこの部屋を使わせると言ったの?
どうして?
だって、ここは副社長が暮らしている部屋なんだよね?
「ここで部屋のシュミレーションをしてイメージを掴み、仕事に反映させろ」
副社長曰く、私の今までの話を聞き「女性を惹きつけるようなモデルルームを作り上げる為に私に必要なことは、実際にその暮らしに触れてみることだ」というのだ。
「でも、ご迷惑ですし。そこまでしていただかなくても、高級ホテルに泊まってみるとか、策は他にもありますから」