・キミ以外欲しくない

いくら仕事のためとはいえ、副社長と一緒に生活を共にするなんて、無理だよ。
それ以前に、男と女なんですけど……。


丁重にお断りする私をよそに「今回の仕事を成功させたいからだ」と副社長は真面目な顔で言ったのだ。

確かに、下心があるようにも思えないし。
純粋に私の為にしてくれているのだと思える。
にしても、唐突過ぎだよ。
こっちにも心の準備ってものがあるわけで。


「俺の事なら気にしなくていい。家事をさせるために部屋を貸すわけじゃないんだから、君はいつも通り君のペースで生活すればいい」


いやいやいや。
いつも通りなんて、無理でしょ。
この部屋は、私が暮らす部屋とは天と地ほど違うんだよ?
広いリビングに開放的なキッチン、ザッと見渡しただけでも高級家具揃いなこと位分かるし。
第一、落ち着かない。


目が泳ぎまくっている私の前に立ちはだかった副社長は、私を見降ろした。
見上げれば副社長と目が合い、ドキッとする。
挙動不審なのは私だけ。
副社長は、至って冷静な表情のままだ。


「俺は君の寝込みを襲ったりするほど飢えてないから、警戒する必要はない。拒否するなら、これは業務命令だ、とでも言えば受け入れるか?」

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