・キミ以外欲しくない
あぁ、やっと分かった。
だから、今回の企画は今迄のマンション建設とは少し指向が変わっていたのか。
「女性目線」だの「社内全体から提案公募」だの、この人が国領グループのトップになっても会社は大丈夫だということを証明をするために。仕事が出来ない私の案まで採用して。
「君は仕事を成功させキャリアを積む、俺はオヤジの鼻を明かす」
「それって、つまり私を利用して社長を見返すと?」
「お互い利益はあるのだから利用じゃない。ってことで交渉成立だ」
「そんな勝手に。私はキャリアアップを考えているわけでは……」
「西本雪乃、二十九歳、独身、嫁の貰い手が見つからなければ、万年平社員で定年まで過ごす気なのか?」
痛いところを突かれた。
三十歳を目前に控え、親や親戚からは「結婚」を焦らせる、最後のプレッシャーをかけられていることを嫌でも思い出してしまう。
私だって、好きで独身を貫いてきたわけじゃない。
好きな人だって何人かは出来たし、付き合った人だっている。
けれど、最後の最後に結婚相手として選ばれるのは私ではなかっただけ……だ。
「余計なお世話です!」
プイッとそっぽを向くと、即座に副社長の大きな手が私の両頬を挟み、強引に顔を向き合わされてしまった。