・キミ以外欲しくない
しかし、提案書が一時選考を通過してしまい、たどたどしく初めてのプレゼンを終えた矢先の出来事だった。


「あれが採用されたんですか? 本気ですか?」

「今回の物件は『女性目線で』というのが一番のコンセプトだったしな。君の提案がベストだと判断されたんだろう」

「嘘でしょ?」


そう答えてしまうのも無理はないのだ。
あの提案書には、私の願望と妄想と理想が詰め込まれた、いわばシンデレラ空間だったから。

何処のどいつが、あんなものを採用しようと決めたのだろう。


不信がる私をよそに、上司は高笑いを続け「まぁ、一旗揚げて来い」などと背中を強く叩かれた。

よろめきながらも手渡された資料は、ずっしりと大量に両手に乗せられ。
一番上の用紙に記された関係者メンバーの一覧に、自分の名前が載っていることに気付き、やっと嬉しさがこみ上げた。


誰かの補佐でもなく、ちゃんとした一員として仕事に携われるんだ。
嬉しい。……けど、大丈夫かな。


「今日、顔合わせするらしいから。西本と一緒に会議室に行けよ」と付け加えるように口にした上司は、既に別の仕事にとりかかっているのか、パソコンの画面に目を向けたまま私に指示を出した。
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