最後の恋 【番外編: 礼央目線】
俺は紫乃に手を振り返す松野さんを視界に映すと、彼女と目が合った気がした。


だけどすぐに視線を前に戻した。


歩き始めても、なぜかまだ彼女がこっちを見ている気がして振り向きたい衝動をずっと抑えていた。


そして校門を抜けたところで、俺の足がぴたりと止まった。


紫乃がそんな俺を変に思ったのか、覗き込むように視線を向けた。


「どうしたの?…何か忘れ物でもした?」

「あ…いや。ただの勘違いだったみたい。」


取り繕うようにそう言って、俺たちはまた歩き始めた。


自分でも最低だと分かっている。


彼女である紫乃を心配しているはずなのに、窓から俺たちを見ていた彼女のことも気になって頭から離れなかった。


彼女は確かに笑顔だったのに…なぜかとても寂しそうで悲しそうで泣いているように見えた。
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