小悪魔なキミに恋しちゃいました。


この人混みの中じゃ、人に紛れて私たちは目立たない。



必死に抵抗してる悠陽ちゃんの声だって、ザワザワとする周りの声と校内に流れるBGMでかき消されてしまう。



そ、そうだ。



大和くん。



まだ近くにいるはず。



人の隙間から大和くんの姿は見えたけれど、私たちを囲うこの人たちのせいで死角になってしまっているようだった。



……こんな時。



「結城くん……」



助けて、結城くん。



あの時のように。



「ねぇ、その手、離してくれない?」



……なんでだろうか。



私、声に出して呼んでもいないのに。



結城くんはエスパーかなにか?



間違いなく私の前に立っているのは結城くんで。



結城くんがいつの間にか声をかけていたのか、その後ろからは大和くんも来ていた。


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