全ての記憶を《写真》に込めて

「で、あんたなんで二つも持ってんのぉ」
「翔くんが、お客さん連れてきてたかもしれないから」
「注文されたの?」
「うん!」
晴くんは厨房と接客をいったり来たりしていて、よくすれ違う。
接客の時の晴くんの営業スマイルは凄かった。


「翔くん、お待たせしました」
「ありがとー!」
「…えっと、なんで二つなのか聞いてもいいかな?」
「え、聞いちゃう?」
「あっ、言いにくかったら良いよ!あんまり聞かない方が…良かった?」
何か翔くんに暗い過去があったとか?
それともやけ食いとか?

「晴!!」

「え、晴くん呼ぶの?」
「はーる!!」

「なんなの!うるさいんだけど!家庭科室まで聞こえたんだけどぉ!!」

怒ったように出てきた晴くん。
いや、完璧起こっている気がする。

「いいからいいから、ほら、座れって」
「はぁ!?俺まだやらなくちゃいけない事があるの、邪魔しないでよねぇ」
対抗する晴くんだが、身長の高い翔くんに敵わなくて翔くんが座っていた席に座らされてしまう。

「ほら、彩月ちゃんも座れって」

私も翔くんに促されるまま晴くんの前にすわる。
「えっと…、翔くん、私まだやらなくちゃいけない事が……」
「彩月ちゃんも晴見てぇな事言わないの〜、休憩も大事だぜ」
それ俺の奢りだから、と言って一口だけ食べてカフェから出ていく翔くん。

「えっ、ちょっ!」
「しょ、翔くん!?」

これ、どうしたらいいの…?

「晴くん、勿体ないから、食べた方がいいよね…?」
「はぁ、仕方ないなぁ」
そう言って晴くんがケーキを口に含む。

「んっ、美味しいじゃん さすが」
「本当だ!美味しいね」
「ねぇ、もうコンテストの服きた?」
「えっと……、き、着たけどすごく恥ずかしいよ」
「知ってる、あんたのお兄さん、嘉月さんが選んだからねぇ」
「えっ、お兄ちゃんが選んだの!?」
通りでサイズがぴったりだと思った。

「あ、クリームついてるけど」
「え、どこ?」
「あー、もっと右」
は、恥ずかしい…。
晴くんの前でクリーム付けるなんて。
晴くんはすごく綺麗に食べてるけどうまく食べられなかったみたい。

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