愛されたいのはお互い様で…。
【夏希はどうやら俺の携帯を見たようだ。個人の携帯はロックしてなかったからな。迂闊だったよ、遅いけど後悔してる。紫は勝手に俺の携帯を見たりしないから。
俺と紫とのやり取りを見れば、紫が彼女だって事は直ぐに解るよな。
そんな…いつもいつも甘い言葉を囁いたつもりはないけど、やっぱバレるよな。他に居ないんだから】
…務。
【夏希は俺にはっきり言って来た。好きだってね。
だけど俺は応える気は全くない。俺は、紫が通う靴屋にさえヤキモチを妬くほど、紫の事が好きなんだからな。
スパッと迷惑だからとまで言って断った。その言い方がよくなかったんだろうな。俺は仕事上の関係以外無理だって言った。
紫が俺の部屋に来て、俺は居なかったのに夏希が出たと言った。
俺はそれをそんな事、有り得ないと紫に言った。俺が帰った時も誰も居なかったんだ。だから、そんな深い意味もなく、紫に酷い言い方をしてしまった。
本当に悪かったと思ってる。一番言ってはいけない事だ。
紫を信じられない人だと思わせてしまった言い方になった】
…はぁ、…務。そうだよ?
【夏希に、馬鹿みたいな話だけどうちの部屋に居なかったよなって聞いたら、居る訳ないって言ったんだ。だからそのまま紫に伝えた。
だけどそれは、紫より夏希を信じたって事になるんだよな。
俺は軽率で馬鹿だった。紫をこれ以上ない程に傷つけた。ごめん、本当にごめんな。
今日、夏希が紫と会って、その後、いきなり俺のところに来たんだ。
それで、真瀬さんから、二人は終わったから、別に私の事は気にしないでいいと言って貰ったって、夏希が言った。
そんな事、俺には関係ない。例え紫と駄目になったとしても、その事と夏希の事は別だ。
俺に誰も居なかったとしても、夏希とはないって言ったんだ。
そしたら、夏希は、今になって俺の留守に部屋に入ったって言った。嘘をついていたって事だ。あり得ないことをしていた。
いつどうやったのかは知らないが合い鍵を作っていたらしいんだ。恐い話だろ。
あの日、たまたま紫が俺の部屋に来たから、居た時間は短かったみたいなんだ。しかも、お帰りなさい、なんて、わざと紫に言って、部屋にいつも来てる関係みたいに勘違いさせようとまでした。自分がここに自由に出入りできるような関係で、男女の関係があるみたいにね。そう思わせるのは簡単だっただろうな】
私が単純だから…。
咄嗟の機転が利くのだから、彼女はやはり頭の切れる賢い人なんだね…。この場合はずる賢い、卑怯だけど。
【どちらかが嘘をついている、ではなくて、真っ先に夏希を疑うべきだったんだ。行ってないと言ったとしてもだよ。
近くに居ると俺に隙があったんだな。油断した。
紫を傷つけて、紫に言いたくないきつい言葉を言わせてしまって、その上、さようならと言われてしまった。
どうしても、謝っておきたかったんだ。
紫の事は信じてるのに、上手く伝えられなくてすまなかった。本当にごめん。信じてないと同じに思わせて。
俺はいつでも紫の事は信じていたから。本当にごめんな】