愛されたいのはお互い様で…。

「何故、こんな事をするのですか、と、聞いてくれない」

それは間違いなくキスの事を言っている…。

「聞けば追い込まれそうで、困るからでしょ?解ってますよ。だから私も何も言わない」

「あの、…薔薇は」

「薔薇?」

「はい。部屋の前に置かれていた薔薇の花束の事です」

「それが私だと?」

「はい」

「何故?」

「え?…何故?…ワインレッドの薔薇でしたし…、花言葉を調べて見たら、深い愛情、…すべてが欲しいです、だったので」

…?…ん?…あっ。これはイタいくらい自惚れ発言じゃないの?…。伊住さんがそういう気持ちを私に持っていると、私がそう思っていると、言ってしまった…。そんな気持ちを知っていて、平然とではないが、ノコノコついて来ている。彼も居るのに。それってどうなの…?

「え、あの、ワインレッドだったから、靴も、丁度、タイミング的にワインレッドだったし、だから…」

焦って言い直してもきっと遅い。話してしまったことは消えない。

「だから私?…可笑しいな…。普通、そんな事まで調べて考えたら、彼からだと考えませんか?…いいえ、調べなくても真っ先に彼からだと思うのが普通です」

やっぱり駄目だった。

「それは…、基本、務はそんな人ではないからです。別に、私の、私達の何の日でもない日だったし…」

「記念日や誕生日ならまだしも…、一番に思い当たったのが私で、彼はこんな事はしないはずだと完全に決めつけたのですか?」

「…はい」

花言葉から考えたら、務であって欲しいとは思ったけど…。

「それが紫さんの判断という事なんですね」

「は、い」

務を除いたら他に思い当たる人がいない。ん…え?

「今夜は泊まってください。帰しませんよ」

「え?…え?あの」

いきなり、どうしてそんな話に。

「あ、誤解のないように。私は狼になったりしませんから。ここに泊まって一晩帰らない。そうして彼の様子を見るといい。えっと、紫さんは家に帰っているとか、何か彼に連絡はしましたか?」

「…え?はい、確か、会社には居なくて、もう帰っていると伝えたと思います」

「んー、だったら、紫さんの部屋を訪ねるかも知れないですね。会えなかった日ですからね。詫びというか、気にしたならきっと訪ねるでしょう。それで留守なら、何か連絡をして来るかも知れない。何も連絡がなければ、…それはそういう事です」

部屋に行かないかも知れない。行っても留守である事を特に気にせず連絡はないかも知れない。端から今日の事、何も思わず、連絡も何もないかも知れない。
改めて人から聞かされると、何も連絡がないって事が…寂し過ぎる結果、かな…。

「試すような事は嫌ですか?少なくとも、何か解るかも知れませんよ?それがどうであれ、帰しませんけどね」

表情が顔に出た。怪しい程の悪戯っぽい顔で微笑まれた。…ん?今夜の内にどんな連絡が来ても帰れないって事?
結局、薔薇の贈り主は誰?
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