愛されたいのはお互い様で…。
目が覚めた私は大きなベッドの中に居た。
ん、ここは……伊住さんの部屋だ。…はぁ、間違いない。飛び起きてリビングに向かった。
「おはようございます。あぁ…、もう少し寝かせてあげようと思っていたのは失敗でしたね。早く起こしに行けばよかった。甘く起こす作業を奪われてしまいました、とても残念です」
「お、おはようございます。あの」
「昨夜の服は乾かしてあります。それから、ゆっくりご飯を食べて帰られたらどうですか?今日はお休みですよね」
見ると朝食の準備は進んでいた。珈琲の良い香りが漂っていたし、焼けて香ばしいベーコンの香りもした。今はスクランブルエッグを作っているようだ。
「取り敢えず、洗面所、お借りします」
「はい、どうぞ。パン、焼いておきますからね」
ろくに返事もせず、バッグを持って洗面所に駆け込んだ。
本当に泊まってしまったんだ。…はぁ。すーっと眠ったのか、お茶を飲んだ辺りから記憶が無い…。朝まで目を覚ます事無く熟睡してしまったんだ。
伊住さんは一緒に寝たのだろうか…、もう、解らない。敢えて聞くのも…。…あー、自分ではベッドに行ってない…運ばれたんだ…。
ポーチを取り出そうとバッグを覗いた。携帯に着信があった。務からのメールだった。
務…連絡してくれたんだ。…私、…ごめんね。
【傘、忘れてるって。無くならないように店でちゃんと預かっておくって】
え?傘?傘の事なの?……それだけ?
にしても…何故、傘があったのか聞かないの?…これだけ?傘の事を言うからには、私が昨夜、店に行っていた事は解ってるはずだ。それをどうこうとか、自分も行ってたんだとかは、何もないの?…。取り敢えず、この用件だけのメール?
これは夜のメールだ。寝ていたから気がつけなかったし、当然、返す事も出来てない。何か言い訳したい事があるなら、言ってくるはずよね。…言い訳がないなら、当然のように何もないのか。
これは、自分から、店に行ってたって事、私に言ってるようなものだから。
…言い訳?私も昨夜の言い訳をまだしていない。