愛されたいのはお互い様で…。
もう出来たなんて。出来たのは嬉しい。でも、早いなりの何か請求が増えるってことになるのかも。…何かありそう。

「一体…貴方は…。私をどれだけ騙すつもりなんですか?」

「…騙す?」

「はい。…だって、…もう出来てるじゃないですか…」

袋から箱を出している。

「座りませんか?ね?」

自分の部屋ではあるけど、伊住さんに手を引かれ、一緒にソファーに腰掛けた。
ちゃんと切り替えられる人だ。さっきの事は最初から何もなかった気になる。

「色んな思いは一旦置いて、取り敢えず、見て貰えますか?
足も合わせて頂きたい」

「…はい」

嬉しいんだけど、今はそれどころでは、……そんな気分のときに。……。
箱を膝に乗せ、蓋を取った。白い紙を左右に広げた。黒く艶のある靴の側面が目に入った。

……片方取り出し、詰めてある紙を取り除いた。もう片方は伊住さんが出していた。
床に置いた。足を入れ、二本のストラップを掛けた。
立ち上がろうとして、先に立った伊住さんが両手を持ってくれた。…前と同じ。

少しその場で足踏みをして見た。踵を上げ下げして見る。…柔らかい、しなやかに動きについて来る。どこも痛くない、…快適だ。

「どうですか?大丈夫?」

「……はい。楽チンで、凄くいいです」

「…良かった。座りましょうか」

「はい」

履いている靴を伊住さんがそれぞれ脱がしてくれた。……はぁ。
…これも、何だか艶めかしい…。所作のスピードと関係あるのかな。足首を掴まれていた。ゆっくりと丁寧だから…かな。

あ、…これで、何もかも終わった事になる。

「伊住さん…」

「はい…」
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