愛されたいのはお互い様で…。
連れではない、と言いたくなった。

窓際の奥の席に案内された。

「アイスコーヒー」

向かいに座った女は注文が早い。本題があるからだ。無駄な時間は要らないって事ですか。
アイスコーヒー、の後に、お願いしますくらい言った方がいいと思いますよ?人として。

私はメニューを手に取った。ご飯を食べに来たからだ。

「えーっ…と、ミックスジュースと、こっちの甘くない方のパンケーキのセットをお願いします」

にこっと笑い、畏まりましたと下がって行った。

「ごめんなさい、私、お腹が空いていて、ここには食事をしに来たものですから。空気を読まなくてごめんなさい」

…はぁ、もう…疲れた。貴女は務の何ですかって、聞きたくもない。一緒に居るってだけで疲れる。務の事、何が言いたいのかな。私に聞きたい事なんてないでしょ。念押しにでも来たのかな。

「どうぞ、お気遣いなく、別に構いません」

断りはしたけど、貴女に食事の許可を申請した訳じゃないから…。強く突っぱねるような物言いは、若さ故のモノ…かな。

「務さんの部屋に来られた時は随分驚かれていたみたいでしたけど。私、務さんの後輩で夏希杏子と言います」

求めた訳ではないのに名刺を出された。身分証明のつもり?業務的に話がしたいって事?
休みでも携帯しているなんて、流石と言うべきなのか、仕事が出来ると見せたいのか…。今時こんなもの、何の身分証明にもならない。

「生憎と私は名刺を持ち合わせておりませんので、すみません。…夏希さん…。名前の響きも漢字も綺麗なお名前ですね」

よくできた芸能人のような名前。綺麗だと思ったのは本当だけど…わざわざ言ったのは社交辞令よ。これを出せば、さぞやみんなに言われているのでしょ?

「私に聞きたい事、あるのではないかと思いまして」

言われ慣れてる挨拶なのね、簡単にスルーしてくれて…。美人さんは名前に限らず、色んな物を褒められ慣れてるからかな。

「特にないですね」

…。

私が、務との関係は?と、聞くと思ったのかしら。だとしたらとんだ肩透かしってとこね。

「あ…真瀬さんは務さんに興味がないのですか?どうでもいいんですか?彼女ですよね?」

…は?聞かない事に面食らったのかしら。貴女のしているこの質問、何でしょうか?
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