彼女の居場所 ~there is no sign 影も形もない~
は?外堀だと?
神田部長はニヤつきながら俺に向かって二つ折りにされた薄い紙をスッと差し出した。
「これが必要になるといいなと思いませんか」
何だよと思いつつとタヌキから受け取った紙を広げると。
…保証人欄が記入済の婚姻届だった。
「神田部長、これは」
驚いて固まる。
正式に交際ですら申し込めていなかったのに、いきなり結婚は無理だろ。
いや、もっとしっかり意思表示をしていたら状況は違っていたのか。
それでも、俺の話も聞かずに逃げ出してしまうような彼女にどうやって話をしたらいいのやら。
いや、いや、早希が跡形無く痕跡を消してキレイにいなくなったのはここにいるこのタヌキの仕業だろう。間違いない。あの素早い退職手続きは元人事であるタヌキだからできた技だ。
俺は目を細めてタヌキを睨みつけた。
今早希がいるTHコーポレーションだってタヌキの口利きで入社させたのだろう。
まあ、早希ならどこの会社でも欲しがるはずだ。彼女の作成した資料を見たり彼女と仕事で関わった者から話を聞くと彼女の営業サポート力は素晴らしいようだし。
よくもまぁこのタヌキも手塩にかけた秘蔵っ子の早希を手放すことができたものだ。
「痕跡を残さず私の元から逃げだしてしまうような彼女が何故高橋の実家が経営するTHコーポレーションに入社しているんですか?」
少し呆れ顔をして聞いてやる。
タヌキはへらへらと笑う。
「早希ちゃんは良くも悪くも下世話な噂話とか興味ない子ですからね。高橋君がTHの御曹司だなんて知リませんよ。
それに僕が早希さんを手放すわけないでしょ。
大事に育てたんだよー。知らないとこなんかにやれない。まぁ、男を見る目は育ててやれなかったのかな。あんなに泣かされちゃうとね、やっぱり他の男にした方がよかったかな。
ああ、でも高橋君とは同期で仲良しだし、仕事もできるし素行も悪くない。早希さんの相手は高橋君がよかったのかもね。今からでも遅くないですよね」
と嫌味で返された。
「神田部長、申し訳ありませんでした。今までのご配慮感謝致します」
俺はすぐさま頭を下げた。
近くでくっくっと笑う兄の声がする。
「神田部長、その辺にしてやって下さいよ。康史も反省してますし、不可抗力な事もありましたから」
神田部長は穏やかな表情になった。
「では、もう早希さんに逃げられないようにお願いしますよ。根回しはしてありますからね」
と今度は一転して目つきを鋭くして口元に笑みを浮かべた。
さすが、タヌキ。
神田部長はニヤつきながら俺に向かって二つ折りにされた薄い紙をスッと差し出した。
「これが必要になるといいなと思いませんか」
何だよと思いつつとタヌキから受け取った紙を広げると。
…保証人欄が記入済の婚姻届だった。
「神田部長、これは」
驚いて固まる。
正式に交際ですら申し込めていなかったのに、いきなり結婚は無理だろ。
いや、もっとしっかり意思表示をしていたら状況は違っていたのか。
それでも、俺の話も聞かずに逃げ出してしまうような彼女にどうやって話をしたらいいのやら。
いや、いや、早希が跡形無く痕跡を消してキレイにいなくなったのはここにいるこのタヌキの仕業だろう。間違いない。あの素早い退職手続きは元人事であるタヌキだからできた技だ。
俺は目を細めてタヌキを睨みつけた。
今早希がいるTHコーポレーションだってタヌキの口利きで入社させたのだろう。
まあ、早希ならどこの会社でも欲しがるはずだ。彼女の作成した資料を見たり彼女と仕事で関わった者から話を聞くと彼女の営業サポート力は素晴らしいようだし。
よくもまぁこのタヌキも手塩にかけた秘蔵っ子の早希を手放すことができたものだ。
「痕跡を残さず私の元から逃げだしてしまうような彼女が何故高橋の実家が経営するTHコーポレーションに入社しているんですか?」
少し呆れ顔をして聞いてやる。
タヌキはへらへらと笑う。
「早希ちゃんは良くも悪くも下世話な噂話とか興味ない子ですからね。高橋君がTHの御曹司だなんて知リませんよ。
それに僕が早希さんを手放すわけないでしょ。
大事に育てたんだよー。知らないとこなんかにやれない。まぁ、男を見る目は育ててやれなかったのかな。あんなに泣かされちゃうとね、やっぱり他の男にした方がよかったかな。
ああ、でも高橋君とは同期で仲良しだし、仕事もできるし素行も悪くない。早希さんの相手は高橋君がよかったのかもね。今からでも遅くないですよね」
と嫌味で返された。
「神田部長、申し訳ありませんでした。今までのご配慮感謝致します」
俺はすぐさま頭を下げた。
近くでくっくっと笑う兄の声がする。
「神田部長、その辺にしてやって下さいよ。康史も反省してますし、不可抗力な事もありましたから」
神田部長は穏やかな表情になった。
「では、もう早希さんに逃げられないようにお願いしますよ。根回しはしてありますからね」
と今度は一転して目つきを鋭くして口元に笑みを浮かべた。
さすが、タヌキ。