クールな外科医のイジワルな溺愛
「どうしてここにいるかわかりますか?」
「わかりません」
「あなたは、横断歩道で貧血によるめまいを起こし、動けなくなっていた。そこによく見ずに左折してきた車が突っ込んだようです」
そういえば、昼から少しふらついたっけ。スーパーで餃子とラーメンを買って、帰る途中でまためまいを起こして……。
だんだんと記憶がはっきりしてくる。
眩しい光が見えた。あれは至近距離まで近づいた車のライトだったんだ。私、轢かれちゃったのね。
「そうですか。で、救急車で運ばれたんですか?」
「ええ。で、私が手術しました。幸い右足の膝の骨が折れただけで、臓器に損傷はないようです。もちろん、全身に打撲や擦り傷はありますが」
やっぱり、この人が手術室で挨拶をしてくれたあの黒崎先生だったんだ。まさか私まで先生に手術されることになるとは。
「あの、先生……私のこと、覚えてますか」
まだ説明の途中なのにそう切りだした私を、黒崎先生は不思議そうに見つめる。
「1年半くらい前先生に手術していただいた、芹沢美智雄の娘です」
「芹沢さん……。ああ、大腸癌の」
覚えてくれていた。それだけでぱっと心が明るくなったような気がした。