クールな外科医のイジワルな溺愛
『先生。父は助かるんですか』
父が大腸癌になったのは、二年前。何度も日帰り入院し、内視鏡でポリープを取った。そのうち悪性腫瘍が見つかり、本格的に大腸癌と診断を受け、手術を受けることになった。そのときの外科でのカンファレンス。黒崎先生に会うのは、その日が初めてだった。
『切っただけで助かるとは言えません。その後も状態が悪ければ抗がん剤治療や放射線治療が必要になります』
先生は淡々と事実を述べる。それはもう、薄情とも思えるような冷静な表情で。
『けれど、最善は尽くします。元の生活に戻れるよう、一緒に頑張りましょう』
親子ともども、不安に満ちた表情をしていたのだろう。励ますように、黒崎先生は笑った。そのときの微笑みは穏やかで、私はやっとホッとしたんだった。
医学部を出て、研修期間を経てから一人で手術を任されるようになったということは、すでに三十代なんだろうけど、そうは思えないほど若々しい見た目の彼。
最初はこんなに若い先生で大丈夫なのかと思っていたけど、私たち親子はだんだん先生を信用するようになっていた。言うことにぶれがないし、いつでもわかりやすく丁寧に説明をしてくれたから。
手術は成功した。難しいところに腫瘍があったみたいだけど、先生は短時間でオペを済ませた。