愛され過ぎて…ちょっと引いてます
向井室長は副社長の部屋のドアを閉めると、私に席に座るように言った。

「千堂さん、驚かせてしまいましたね」

苦笑しながら話すその口調はとても優しい。

それは私の知っている向井室長だ。

さっきの副社長に注意を促す口調とは全然違う。

そう私が感じているのを気付いているのか、向井室長は自席の椅子を持ってきて私の前に座った。

「もう何となく気付かれたと思いますが、今回の急な人事は副社長のご意向です。あんなにハッキリ態度に出されたら隠すこともできませんね」 

呆れたようなため息をつく向井室長に、私はどう答えていいか分からない。

「はぁ...」

「副社長は本来公私混同などされる方ではないのですが、今回に関しては違ったようで、私も驚きました」

何も答えられない私に、続けて話す向井室長。

「申し訳ありません、千堂さん。もう少し様子を見てからと思っていたのですが、そうもいかないようなのでハッキリ言わせて頂きます」

急にピキッとなった空気に、私の背筋も伸びる。

「はい」

答えながら緊張が走った。

「副社長は千堂さんに恋をしました」

「....」

向井室長が真っ直ぐ私を見ている。
  
 ー副社長は...千堂さんに...恋を..しました???ー

「はい?」

上司相手に失礼な返しが出てしまった。

でも向井室長は気にする様子もなく、もう一度口を開いた。

「昨日、副社長は千堂さんに一目惚れしてしまったそうです」




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