恋するオフィスの禁止事項 ※2021.8.23 番外編up!※

突然のことに口から心臓が飛び出すんじゃないかというほど驚いて、現れた先輩の顔とも目を合わせずにいた。

目を合わせていないのになぜか先輩の顔のかっこよさが空気感で伝わってきて、余計に見てはいけない気がした。

傾いているディスプレイにしぶとく向き合って文字を打とうと試みる私に、きっと先輩は眉を寄せている。

「メール見とけよ」

先輩はそう一言だけ言うと、上着と鞄を持ってオフィスを出ていってしまった。

どこへ行くんだろう。

……なんだっけ、メール?

パソコンの傾きを起こしてから社内メールをポチリと開いてみたが、特にメッセージはきていなかった。

それならばと思ってマナーモードになっている自分の携帯をデスクの引き出しの中から取り出して確認してみると、そこには確かに先輩からメールが来ていた。

『このまま店頭調査に行って会社には戻らないから。6時に駅の西口にいて』

ちゃんとご飯に行ってくれるつもりなんだ。
私の祝賀会。

皆の誘いは断ってるのに、私だけ……。

きっと先輩は優しいから、なにも知らずに喜んでいた私の誘いを断れなかったのかもしれない。

でも、そんな先輩が自分のポリシーを曲げて私のお祝いを優先してくれたということは、少しだけ嬉しいと思ってしまうのだ。



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