所長による小動物系女子の捕獲計画
小学生の時、毎年長期休みには長くじいちゃんの家に滞在した事。その時、森の中にちょこんと見えるアドルフの城の塔が気になってずっと見ていた事。六年生の夏に一人で冒険に出かけて潜入した事。

「アドルフはさ、まったく知らないガキの俺を大人扱いしてくれたんだ。城の構造とか由来とか、質問全部に真剣に答えてくれて。その時、城に感動するのと同じくらい、中世の城を生き返らせて、そこを家として住んでるアドルフに感動したんだ」

「もしかして、それが?」

「うん、建築士を目指したきっかけ。日本ってさ、一般的な建造物は短命でしょ?勿論、寺とか城とか、一部の住居は違うけど。しかも、リノベーションされる事はほとんどない。」

現代日本の一般的な住宅は一世代用だ。同じ家をリフォームしたりリノベーションして何世代も使うという発想はほぼ皆無だ。

でも日本と同じように長い歴史を生きるヨーロッパでは違う。建築素材がレンガで耐久性に優れているのもあるだろうけど、人々の感覚が違うんだ。実際、ロンドンやパリなんて大都会でも、100年ものの建物なんかざらだ。

「でもさ、そんな日本でもその土地に合った建物でありさえすれば、愛されて何百年と残っていけるんじゃないかって思うんだ。」
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