所長による小動物系女子の捕獲計画
「何百年も愛される建物‥‥素敵ですね」

夢見るように微笑んだ彼女の頭の中には、いったいどんな風景が浮かんでいるんだろう。


「アドルフは建物の持つ可能性を小学生の俺に真剣に教えてくれたんだ。考え方次第、使い方次第で永遠に存在するものを作る事が出来る。それが建築家の仕事だって。
ま、そう言ったアドルフ自身は奥さんの為に日本でリタイア生活を満喫してるけどね」

冗談めかして話し終えたのに、莉乃は夢見る表情のまま、ほぅっと息をついた。

「私、見てみたいです。多和田さんが造る何百年も愛される建物や、その建物達で構成される街を」

「うん、見ててよ。俺がどんなモノを造って、それがどうなっていくのか。俺も莉乃に見てて欲しい」

赤信号になったタイミングで左手を伸ばし、莉乃の右手をギュッと握る。

「今、初めてこの車に不満を感じたよ。ミッションじゃなくてオートマ車なら、ドライブの間中、ずっと手を握っていられたのに」

「‥‥‥私も、です。」

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