これを愛と呼ばぬなら
「美沙ちゃんのお知り合い?」

「えっ、そういうわけでは……」

「あらっ、そうなの?」

 優子さんと話していると、その男性がこちらに視線を向けた。私に気づき、記憶を辿るように少し眉をひそめた後、目を大きく見開く。

「君は、あの時の……」

 私のことを覚えているようだった。

「なんだ、やっぱり知り合いなんじゃない。ひょっとして、待ち合わせ? 席はお隣でいいのかしら」

 何も知らない優子さんが、はしゃいだ声で男性と私に話しかける。

「いえ、あの……」

 どうしていいかわからずにまごついていると、男性が静かに席を立った。こちらへ歩いてくると、私に向かって小さく会釈する。つられるように、私も頭を下げた。

「先日はありがとうございました。もう一度会ってお礼を言えたらと、ずっと思っていたんです」

「そんな、私は何も」

 大したことはしていないのに、と頭を左右に振る。

「よかったら、少しお話しませんか」

「……ええ」

 普段なら決して承諾しないけれど、私も彼に返したい物がある。私が頷くと、男性は優子さんに向かって言った。

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