これを愛と呼ばぬなら
「そうですね。明日にでも連絡してみます」

「それがいい」

 深刻そうな顔で頷く新井さんを見て、思わず笑みを浮かべてしまう。

「どうかした?」

「いえ、……嬉しいなと思って」

 私が言うと、新井さんはキョトンとした顔で私を見返した。

「こんなふうに心配してくれる人、今まで私の周りにはいなかったので。本当にありがたいと思っています」

 血の繋がった家族とさえ、心がすれ違ってしまった。ひとところに長く居ることのできなかった私には、深く付き合える友人もいない。

「そっか……」

 新井さんは、それ以上何も言わなかった。言葉が出なかったのかもしれない……。

 余計なことを言ってしまったかもしれないと、気がついた。

「遅くまですみません。ありがとうございました」

「……つらいなら、しばらく休んでも構わないよ?」

 新井さんはどこまでも優しい。でもそんなに甘えてばかりいるわけにもいかない。

 私は強くなると決めたのだ。

「大丈夫。ちゃんと行きます」

「わかったけど、無理はしないで」

「はい、ありがとうございます。おやすみなさい」

「……ああ、おやすみ」

 新井さんは最後に柔らかな笑みを浮かべると、蛍光灯の点滅する廊下を歩いて行った。

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