へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
人間に出会ったら殺せ?
それは聞き間違いなんかではなくて、確かにレックスさんはそう言った。
ということは、森に潜む凶暴な魔獣や、たびたびマーグレーン街に現れては人を襲う魔獣をつくっていたのはもしかして、レックスさんだったというの?
森で私に襲いかかってきた大きな犬の魔獣も、レックスさんがつくった?
そういえば校長先生が言っていた。
レックスさんは魔獣の力がどれほどなのかを試すために、人を襲うことで魔獣が持つ力を測ったのだと。
校長先生はそう教えてくれたけど、私はあの優しいレックスさんがそんなことをするわけがないと頭の中で否定し続けていた。
レックスさんが魔獣をつかって人を傷つけていただなんて、信じられない。
信じたくない。
「レックスさん……どうして?」
声を震わせながら呟くと、ようやく私の存在に気付いたレックスさんが振り返った。
レックスさんの奥にいる2体の巨大な魔獣も、私に射るような鋭い目を向けてくる。
「お、誰かと思えばまたメイベルか。何やってんだよ、今夜は満月だぞ?森を彷徨う無数の魔獣が満月の光で強くなってるんだ。危ないからさっさと帰れ」
そう言って笑いかけてきたレックスさんは、いつもどおりの優しいレックスさんだった。