へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
草地に散らばる枯れ葉を踏み鳴らしながら、震える足でレックスさんとの距離をつめる。
レックスさんと私の距離が3メートルまで縮んだところで足を止めた私は「森にいる魔獣はすべて、レックスさんがつくった魔獣ってことですか…?」と、2体の巨大な魔獣を気にしながら恐る恐るそう訪ねた。
「え?何を馬鹿なことを言ってるんだよ、メイベル。俺が人を襲うような魔獣をつくるわけ……」
「私、聞きました。さっきレックスさんが、後ろにいる2体の魔獣に人間を殺せって言ったこと」
レックスさんの顔から、一瞬にして笑顔が消える。
「チッ……なんだよ、聞いてやがったのかよ」と呟いたレックスさんは、もう私が知っている気さくで優しいレックスさんではなくなっていた。
「ああ、そうだよ言ったよ。俺がつくった魔獣の力を見てみたいっていう理由と、この森には誰も寄せ付けたくない秘密のアトリエがあるからな。だから俺は森の付近にアトリエを守る意味合いで魔獣を放ち、ついでに人間を襲わせてその力を見ていたんだよ」
レックスさんの鋭く尖った視線。
今までは陽気に聞こえていたレックスさんの「ハッハッハ」という笑い声も、恐怖のせいか不気味に聞こえる。
「だからって……人間を殺せだなんてそんなこと…」
「許されないってか?いいんだよ、俺は何の力も持たない弱い人間が嫌いなんだ。俺が適当につくった魔獣に殺されるような弱い人間なんか、俺にとっては何の価値もない」
だから弱い人間なんか俺の魔獣の実験台になって死ねばいい、とのレックスさんの心ない言葉が、私の胸を鋭く突き刺した。