へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする


何かと失敗ばかりの私だけど、やればできるじゃないか。

これはさっそくルキやエイミーや、それからライザにも自慢をしてやろう。



はじめて魔獣を倒したという喜びに浸っていると、2体の魔獣を押しつぶしていた岩が、がらりと崩れる音が聞こえてはっと顔をあげた。



「え……なに?なんなの?」



2体の魔獣の上で山のように積み上げられた岩の隙間から、さっきまではなかった犬の前足が見える。

それに大蛇の黒くて太い尾の先も、いつの間に現れたのか岩山から飛び出している。



犬の前足と蛇の尾が動くたびに、がらがらと崩れ落ちる岩。



「まさか、倒せてなかった…?全力の魔法だったに…⁉」



崩れ落ちた岩の中から、2体の魔獣がゆらりと立ち上がる。

2体の魔獣の赤く燃えたぎるような尖った瞳が、砂地に座りこんだまま立ち上がれない私の姿をとらえた。



「あっ……やばい…」



大きな犬と大蛇は岩山から飛び出すと、真っ直ぐに私へ向かってくる。

逃げなきゃいけないことはわかっている。

だけど恐怖ですくんで腰があがらない。



再び魔法で反撃できるだけの余力はない。

魔力が残っていないから、防衛魔法を張ることすらできない。



2体の殺意に満ちあふれた牙が、座りこんだまま動けない私のすぐ目前まで迫る。



駄目だ……やっぱり、私なんかが敵う相手じゃなかったんだ。



パパとママを殺した魔法使いの正体が、ようやく突き止められたというのに。

復讐もできないまま、私もまたレックスさんがつくった魔獣に殺されてしまうんだ。



「パパ……ママ、ごめんなさい…」



仇を打つことができなくて。

最後までへなちょこ魔法使いで。

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