へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
くるりと身体を返した私は、後ろ髪を引かれる思いで女子寮に向いて足を踏み出した。
「気のせいじゃないよ」
森の中からまたルキの声が聞こえてきたような気がして、またすぐに振り返る。
「ルキ?」
今度は確かに聞こえた。
低いながらに優しい響きのある声が、はっきりと耳に届いた。
鬱蒼と葉を茂らせる木々が邪魔をして、ひとすじの光すらもない真っ暗な森の奥から枯れ葉を踏んで歩く足音が聞こえる。
誰かが私に向かって歩いてくる。
今の声は間違いなくルキのものだ。
私がルキの声を聞き間違えるはずなんてないもの。
そう確信していた私は足音に向かって、暗い森の中へ飛び込んだ。
すると暗闇の奥からぼんやりと姿を現したのは、やっぱりルキだった。
「メイベル、夜の森の中になんか入ったらだめだろう」
ルキは再会を喜ぶでもなく、叱るような口調で言いながらむっと眉間を寄せていた。
「ルキっ‼ごめんなさいっ……‼」
ルキの姿が視界に入りこんだその瞬間、左足の痛みを忘れて無我夢中で駆けだしていた。
ぎゅっとその胸に飛びこむと「ごめんなさい!」が止まらなくなった。
「ごめんね、ルキ!私がルキを消してしまったのっ……‼ごめんなさい。会いたくて会いたくて、仕方がなかった!」