へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
森の目の前まで行ってみて、外から木々の隙間に誰かいないか目を巡らせてみたけれど暗くてよく見えない。
また松明をつくって森の中に入ろうか、と思ったけどそれはムリそうだ。
「ルキを探しに行きたいけど…今日はもう私も帰らなきゃな…」
居残り掃除の罰をうけている真っ最中で、さらに門限を破るわけにはいかない。
それに森にはまだ、レックスさんがつくった凶暴な魔獣が残っているから今から探しに行くなんて危険すぎる。
「絶対にまた……会えるよね?」
もちろんルキから返事なんてないけれど。
今すぐにでもルキを探しに行きたい気持ちを抑えながら、森に背中を向けて寮へ真っ直ぐ歩きだした。
そのとき…。
強く吹き抜ける風に葉がさざめく音と、暗くなりはじめた空を無数に舞うカラスの声に混ざり「メイベル」と名前を呼ばれたような気がした。
はっと足を止める。
「ルキっ⁉」
私の名前を呼んだ柔らかい声色はきっとルキだ。
慌てて振り返ってみると、そこにはルキがいると思ったけれどそんな期待は見事に裏切られてしまった。
後ろには相変わらず、暗闇に満ちた不気味な森があるだけ。
そこにルキの姿はない。
「なんだ……気のせいかぁ…」
ほんの一瞬だけだけど、ルキの声が聞こえたような気がしたのに。