へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
「モデム?雑誌?」
ルキは私の手から小さく折り畳まれた紙切れを受け取ると、中を開いてまじまじと眺めている。
「その魔獣はフォルスティア学園の近くにあるマーグレーンっていう大都市に住んでいる魔法使いがつくった魔獣なの」
マーグレーンはフォルスティア学園からバスで40分の場所にある大都市で、そこには数人の魔法使いが暮らしている。
中でも画家のレックスさんっていう気のいい20代半ばくらいの男性がいて、その人がつくった魔獣が可愛いのなんのって。
そりゃあもう、何度も実物に会いに行っているくらいに。
「ふーん?この白くて小さい綿のような魔獣が、女の子たちから人気があるの?」
「そうなの!綿菓子みたいにふわふわで、手のひらに乗るくらい小さなウサギみたいな魔獣!」
背中には小鳥のような白い羽も生えていて、いつか私もレックスさんのような、可愛い魔獣をつくってみたいと思っていたのだ。
創作主の魔法使いにとても忠実な魔獣は、世の女子からは『可愛いペット』として扱われることもあって。
どのようなイメージを持ってつくったのかとか、事細かに書かれている『モデム』は人気雑誌のひとつなのだ。
「どう?雑誌のとおりの魔獣をつくれそう?」
「どうかなぁ……自信はないけど、やってみるよ」
少し離れててね、と言われた私は紙切れを受け取り、ルキから3メートルほど距離を取った。