へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
ルキは外灯の明かりの下で目を閉じると、これから魔獣をつくるにあたって魔力を高めはじめた。
魔獣をつくるときはたくさんの魔力を使うことになってしまうから、こうして少しの間、精神統一をする必要があるんだって雑誌にも書いていた。
「あ、待ってルキ。魔法を使う前にはね、神より与えられし力よ我が糧となれ。その力を今解放するって言わなくちゃいけないんだよ」
「……そうなの?その言葉には何の意味があるの?」
「魔法はね、神様から頂いた特別な力なの。だからその力をこれから、使わせて頂きますっていう意味があるんだよ」
目を閉じたまま聞き返すルキに、カサエル先生に教わったそのままの言葉を教えてあげた。
いえば、食前に『いただきます』や、食後に『ごちそうさま』というのと同じようなことだ。
感謝の気持ちを持って魔法を使うんだよ、と付け加えると、ルキは納得したのか静かに詠唱をはじめた。
ルキから放たれる魔力があまりにも高いせいなのか、そのビリビリとした空気に思わず顔が強張ってしまう。
「神より与えられし力よ我が糧となれ。その力を今解放する」
すると目を閉じたままのルキの右手のひらから、黒煙がぼんやりと放たれた。
「来い、魔獣‼」
ルキが両手を勢い良く広げると、宙を漂っている黒煙がぎゅっと凝縮した。
黒煙がうさぎのような形にかわりはじめたとき、目も開けていられないほどの強い光が放たれ私の視界は真っ白になった。