【BL】お荷物くんの奮闘記
 三十年以上前に哲学者によって定式化されたが、残念なことに、今の人類では自分が生きている世界を現実であると証明するに足る学問には辿りつけない。

夢の世界と、現実の世界、どちらが本来の自分が居た世界なのか、一度混乱してしまうと戻れなくなる。


 この世界は夢だと思っている。そう思いたいという希望が多分に含まれている。

だが、この世界で直面した『死』は、脳みそではないもっと奥深くへ恐怖を植えつけてくれた。常に最悪を考えるなら、そう思いたいなどとは言っていられないのだ。


「オレに出来ることなら、なんでもする。おまえと、持っている情報を共有させてほしい」


「たとえば?」


「おまえがここに来た当初の目的――反社会勢力について。最初にオレを指名手配しろと言ったあの男について。他にも北に住む人知を超えた存在に関して、何か分かっていることがあるなら知りたい」


 ふむ、と彼が考えるそぶりを見せる。彼にとっては万一があれば地位を危うくする頼みごとだ。ダメ元のつもりで持ちかけたそれを一考してもらえるというだけでもありがたい。


「見返りには何を望んでもいいと?」


「え、あ、ええと、命とか要求されると流石に困るけど」
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