【BL】お荷物くんの奮闘記
 前時代に僧侶が試練を受けた場所である冥地の神殿は、師匠から受け取った記憶とは違って崩れかけた廃墟のようになっていた。


「あのゲームの話じゃ、神殿の奥にある祭壇が外にアクセスできるポイントになっているらしいが……」
「これじゃあ入れないね」


 神殿のアクセスポイントを塞ぐ役目を担っている天使が少年によって倒されたのなら、アクセスポイントは今剥き出しの状態だろうと考えていたのだが、ここまで破壊されていては調査不可能だ。

悪魔と呼ばれた少年が意図的にこの神殿を潰したのだろうことが分かる。


「別の神殿を当たるか。ここからだと確か少し南下したあたりに、風雷の神殿がなかったか?」


 冥地の神殿は師匠から引き継いだ記憶と同じ場所に出現したままになっていた。

神殿の発生地点に変化がないのであれば、スマホのフィールドマップには未だ表示がなくとも神殿まで自力で移動できるはずだ。


「古い遺跡があるのは確かだが、徒歩では少なくとも丸一日かかるぞ」


 ヴェルターの言葉は正しいのだろうが、どこかでアクセスポイントを見つけないことには記憶操作というその場しのぎの解呪しかできない。

東国にはバグで今にも消滅しかけている住民が山といる。一刻をあらそう事態で、その場しのぎもこうなってくると本当に効くのか疑わしいほどである。
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