【BL】お荷物くんの奮闘記
「オレが移動魔法でさくっと行ってくるさ。何かあったらスクロールで合流ってことにしようぜ。一枚につき一回限りだけど、四人のMPに紐付けできてるから誰の元にも飛べる」


 行ったことはなくとも座標さえ正確に出せれば術の構成自体は可能だ。皆はとりあえず屋敷に戻って、と誘導しようとしたところで、リュータが腕を掴んできた。


「待って。神殿に行くって、天使を召喚するってこと?」


「ん? ああ、そうなるな」


「おれも行く。……ユウの記憶、ちょっとでも覚えてるなら分かるよね。「天使」が一撃でレベル八十の前衛のHPを全部削りきるだけの技を使ってくることくらい」


 水雹の神殿でおまえ一撃ノックアウトだったもんな。とは言わない。彼があれの攻撃を食らった原因はもとをただせば「ユウ」を庇ったからだ。今思えば、属性の得手不得手もあるのかもしれない。


「おまえは……置いてっても、スクロールでついて来るか」


「スクロールがなくても、自力で追いかけるよ。ユウジを一人で行かせるなんて絶対いやだ」


 仕方ねえな、と苦笑で彼の髪を撫でる。

自分一人なら天使が本当に来るかどうかの確認だけさっと済ませて逃げ帰るつもりでいたのだが、彼が来るなら実際に戦闘に入るに違いない。

同族と戦わせることになるかもしれないという申し訳なさと、水雹の神殿の二の舞になりはしないかという不安が先立ってリュータを置いていきたかったが、それはこちらの都合だ。

彼にとっては手も足も出せない遠い場所でただ待つだけの方が毒になるのだろう。
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