【BL】お荷物くんの奮闘記

 約束の酒場に戻ってみると、そこにはリュータが先に着いてカウンター席でりんごジュースを飲んでいた。

うん、酒場だもんな。酒飲めないしそれ注文するしかないよな。笑いを堪えて歩み寄ろうとしたところ、見知らぬ女性が彼の肩を叩いた。なにやら話し始めている。


 まだ情報収集の途中だったのだろうか。こちらは有力情報を掴めているのでもう調査する必要はないのだが、なんとなく声をかけるタイミングを逸してしまう。


 しばらく観察していると、リュータが硬貨の入った袋から金貨を大量に掴んで女性に手渡した。

ばいばい、とリュータが立ち去る彼女に大きく手を振って、女性は入り口に立っていた自分の横を素通りして帰っていく。


「あっ、ユウジ!」


「今の女、情報収集で声かけたのか?」


「え? ううん、今会ったひと。病気の子供が居るんだって。大丈夫かな」


 治療のためのお金が足りないって言ってたから、とそこまでリュータが口にしたのを聞いて状況が掴めた。どうやら引っかかったらしい。


「嘘に決まってんだろ。子供が病気してるんならこんなとこで油売るかよ、明らかに酒臭かったじゃねえか」


「そうなんだ。じゃあ、病気で苦しんでる子供はいないんだね。よかった!」


「……おまえなあ」


「あ、ごめんユウジ。情報収集のためのお金渡しちゃった」


「いいよ。もともとおまえの稼いだ金なんだし好きにすれば」
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