【BL】お荷物くんの奮闘記
「つまんねえ。じゃあユウジは起爆剤に使うか」


「起爆剤?」


「おれは正直あんまり乗り気じゃねえんだけど。カインの目的は、天使化したリュータ――ウリエルに、魔王カインを倒させることだ」


 耳を疑う。倒されることを望んでいる魔王がいるというのか。

カインからするとこの状況、勇者の仲間はとりあえず地上で捕縛なり殺すなりで動けない状態にしておいて、誰か一人餌を城に持って帰って、そこに勇者をおびき寄せたところで餌を人質に勇者を始末――という思惑なのだろうと考えていたが、そうなってくると話が変わる。


「倒したその場で引き継ぎは行われる。その場に他の仲間がいなければ、一人で倒したとみなされて選択権なく勇者本人に直接継承だ。

けど、天使は魔王継承システムからは除外される。この矛盾がシステムを壊す鍵になるんじゃないかって、カインは話してる」


 魔王も、このやっかいな持ち回り制のラスボス制度に疑問を覚えて、変えたいと願っていた。それなら、互いの手札をすべて晒し合って協力体制を取ることだってできるんじゃないのか。

予想外の希望が見えた時にも戦慄というのは走るものなのだと、この歳になって知った。


「他の仲間が来ちまったもんは仕方ねえや。全員始末して――リュータだけになったら目の前でユウジを殺す。天使様にはもう一回、暴走してもらうぜ」


「……レツ、おまえはそれでいいのか」
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