【BL】お荷物くんの奮闘記
「……リュータのことは、裏切れねえ」


「んー? 一番無難な手段だと思うけどな。ハッピーエンドじゃん。おまえ以外は」


「リュータは、永遠の勇者だ。オレ一人が従えばいいって取引なら喜んで応じるけど、……おまえが、魔王を殺せる資格を持ったリュータを見逃すとは思えない」


 他の仲間のことは全部忘れて、という一言が、飛びつきそうになった自分を押さえ込んだ。ほら、やっぱりな。レツが皮肉げに笑みを浮かべる。


「交渉決裂だな。お互い、口約束できるほど信頼に足る人物じゃなかったってこった」


 リュータが来たって話、カインにしてこねえと。ベッドから離れて、彼がテレビの電源を切った。
「じゃーな、限られたMPで頑張って抜け出してみろよ。レベル三十の大賢者様」


 ひらひらと手を振って、レツが部屋から出て行く。しっかり施錠される音まで聞こえてしまった。内側から見るに外から鍵を掛けられる扉にはなっていないところを考えると、外に南京錠でも付けられていそうである。解錠の術は使えるだろうか。


 そこで、服を全部奪われた理由に思い至った。レツはステータス管理ができる便利アイテムでもあるスマホを自分が持っていることを事前接触で知っていた。

服の内側にスクロールなどのアイテムを仕込まれていないかの確認もかねて、身ぐるみ丸ごと剥いでスマホも所持していた回復薬の類もすべて没収したのだろう。

ついでに服を取り上げておけば逃げ出そうと考えるまでの時間稼ぎにもなると思ったのかもしれない。
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