【BL】お荷物くんの奮闘記
 ここから脱出した後で、服やアイテムを取り返すまでの間に敵と遭遇することになるならMPはできる限り使いたくない。

合流できれば少なからず回復薬は持参しているだろうが、この後の戦いを思えば無駄に使わせるわけにもいかない。

首の傷も治しておきたいが、回復量を考えればもう少しダメージを食らってからの方が良さそうだ。


 傷が付いてしまった以上、回復魔法を使うまでは合流の魔法陣は使えない。

脱出魔法、解錠魔法なしでこの場を切り抜けるには。部屋の中にあるものを、もう一度ざっと見回してみた。


 まったく、自分はどこまでお荷物なんだろう。笑いがこみ上げてくる。

今この時にも、リュータたちはレツと戦闘を始めている可能性だってある。

自分が行っても役に立つかは甚だ疑問だが、どのみちこのままここに残っていれば、最終決戦で見せしめに殺されて悪手になるだけである。


 まあ、帰るって約束したしな。


 ベッドから降りて、ベッドの脚に繋がった鎖を確認する。

鎖の方は取れそうにないが、それならベッドを分解するだけである。

棚に置かれたフィギュアスタンドの中から手頃なサイズの金属製パーツを拝借する。

パーツの先端を使って下に回り、現代の組立ベッドが“正確”に再現されていることを確認した。

ありがとう魔王の万能創造能力。フィギュアの金属パーツをドライバー代わりに、ネジ部分を外していけばこの場を離れることはできる。


 ひとつずつ丁寧に分解していき、レツの部屋のベッドは哀れバラバラ遺体となった。

次はドアノブの南京錠だが、真面目にドアから出てやる必要はない。

分解したベッドの一部を窓に放り投げ、鍵のかけられていた窓ごと叩き割る。

割れ損ねたガラス片はシーツを被って安全を確保し、布越しに持ったベッドの一部でごつごつ割っていく。
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