【BL】お荷物くんの奮闘記
「何が目的だよ? まさか元被疑者とお茶したいから連れて来いなんて酔狂が居るわけねえし――」


「誰も直接お会いしたことのない非常に高貴なお方だ。勇者伝説の語り部とも言われている」


 小出しにされる情報に、うっかり心が揺れる。


「え、ユウジ」


 まさか行くのと肩越しに彼がこちらを伺う。好奇心と実利の両方が、頭の中で『昨日の敵は今日の友! 昨日の敵は今日の友!』と囁くどころかマイクとスピーカーで大合唱している。


「はいオレ行きます」


 寝返るスピードは速かった。


 大きな溜め息とともにリュータが肩を落として、おれも行っていいんだよね? とヴェルターに確認を取る。


「付き添いを連れてくるなとは言われていない」


 何も好奇心に忠実に従っただけではない。自分が相棒の頭脳になるなら、出来うる限り完璧を求めたい。彼を守るのに、情報はあって困らないものだ。


 ついてこいと案内を始めてくれようとしたヴェルターを制止して、その前にと地に散らばる荷物を指差す。


「荷物宿屋に置いてきたいんだけど」


 あっと声を上げて、リュータが慌てて荷物をかき集めた。
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