【BL】お荷物くんの奮闘記
 なるほど、エレベーターや醤油、電子機器がないのだからほとんど意味を成さないこの電波塔もその世界の王とやらの思いつきで実装されているというわけだ。

そしてこの街の住民はデバッカーの役割を担っている。世界の王とやらがこの世界のプログラマーであると考えるべきか。


 だとするなら、異世界を行き来する手段はその世界の王とやらが握っている可能性も出てくる。


「世界の王は、異世界出身だったりするか?」


「いや、この世界の人だよ。確か……元々は身分がとても低かったという話は聞いたな」


「そうか」


 行き来する手段を知っているだけで、日本出身ではないのだろうか。


「その世界の王に会う方法は?」


「北方山脈の方に行けば、会えるはずだよ」


 そんなことまで教えていいのか。


 教えたところで主人が危険に晒される心配はないと確信しているように思える。


「分かった、ありがとう。次は、勇者についてだが」


「僕が話せるのは、神の元に迎えられた勇者の話だけど」


「そりゃ死んだってことか」


「少し違うかな。ああ、見方によっては、そうかもしれない」


 どこから話そうか、と記憶を遡っているらしいプロフェットの言葉を待つ。
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