【BL】お荷物くんの奮闘記
「まず、一万五千年前。今と同じような文明がこの地には築かれていた。その時代、人は魔に虐げられる弱い種族だった」


 寝物語の御伽噺のように、異世界からやってきた勇者が魔に打ち勝って、人の時代がやってきた。


 けれど平穏はほんの一時で、魔に打ち勝つという世界のバランスを欠く行為に神が怒り、人も魔も無差別に地上の全てが焼き尽くされた。


 それを哀れんだ勇者は、故郷である異世界へ戻らずにこの地の復興に力を貸して、勇者は神に認められた。


「そんな感じかな。君の求める答えになってた?」


 簡潔にまとめられて聞かされた話は、どこにでもありそうないかにもな勇者伝説だった。


「ああ。故郷には戻れなかったんじゃなく、戻らなかったってことか?」


「そう聞いているね」


「だとしたら、世界を行き来する手段は勇者も知っていると」


「君は……?」


「オレも、リュータも、その話に出てくる勇者のように異世界からやってきたんだ」


「そうだったんだね。どうりで、あの人が気にするわけだ」
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