【BL】お荷物くんの奮闘記
 あの人、というのはおそらく彼と直接つながりのある、世界の王とやらのことだろう。

神の元に迎えられた勇者が王の子飼いとなっているのか生贄だか人柱だかになったのかは分からないが、勇者と同じように異世界からやってきた旅人のことが耳に入れば、気にならないわけがない。


「……リュータ、どうした?」


 隣に目を向けると、リュータが紅茶の湯気をぼんやりと見つめていた。


「あ、ううん、なんでもない。少し眠気が」


「そういや、難しい話聞くと眠くなるんだったな」


 授業中はしょっちゅう寝ているらしい。本人の話によると、真面目に受けるつもりはあっても逆らえない睡魔が襲ってくるのだとか。


「あはは。ちょっと降りて眠気覚ましに外の空気吸ってくるよ」


「そうか」


「すぐに戻るから」


 ここを離れたということは、このフロアに武器や魔法のトラップなど危険な仕掛けはないと判断したのだろう。席を立つリュータを見送って、話に戻る。


「後で、君の故郷の話も聞きたいな。リュータが戻ってくるまでの間だけでも、聞かせてくれないかな」


「いいけど、何から話しゃいいんだ」
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