【BL】お荷物くんの奮闘記
「この世界と、君の故郷との違いとか」


 異文化交流ってやつだよ、とプロフェットが一度紅茶を口にした。


「僕は、作られて以来ずっとここから出たことがない」


 不満はないよ。あの人の言葉を伝える、それが僕の存在意義だから。急に始まった身の上話で、リュータが席を外すのがイベントフラグだったのかもしれないと内心考える。


「どうもね、ここから出てしまうと、僕みたいにあの人に作られたものは溶けてしまうらしいんだ。氷雪のように」


 話を聞く限りだと、この塔に直接王の魔力がかけられているのかもしれない。彼を作り出す魔法が建物由来のものである以上、外に連れ出すのは根本的に不可能だろう。


 おそらく王は、そうすることで情報を管理している。


「でも、この街の人は僕と話をする時に、よく街のおいしいものとか、おもしろいものとか持ってきてくれるから、寂しくもないし、満足してるっていうか」


「おまえ、ちゃんと温かいじゃん」


「え?」


 テーブルに身を乗り出して、向かいの彼の頬を触る。人形だと話しているが、体温はある。紅茶も飲んでいた。
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