【BL】お荷物くんの奮闘記
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「で、君はぼくの言ったことも忘れて、人助けして帰ってきたと?」
また服こんなに汚して、繕うの大変なんだからね。主婦みたいな小言をぶつぶつと口にする彼は、誰がどう見ても同い年の少年だ。
「あの辺の町でトカゲ被害に困ってるって聞いてなんか可哀想でさー。あ、でもな、おまえに土産があるんだぜ」
「紅茶は、確かに嬉しいけど」
「そっちもだけど、そっちだけじゃなくてな! おまえが喜びそうな話」
「なに?」
「魔王が二人だったとしたら、おまえどうする?」
「……道草については不問にするよ。詳しく教えて」
やりぃ。心の中でガッツポーズだ。泥だらけで抱きついて彼の服までべとべとにしてしまったことについては、おそらくこれでチャラにしてもらえるだろう。
「でも、ちょうど良かった。実はね、今から世界を震撼させる大事件を起こすつもりだったんだ」
「大事件って……核戦争とかか? またおれの記憶から何か作んの?」
違うよ、と彼が首を振る。
「安息の地、中央都市が神から見捨てられる瞬間を演じるんだ。魔が一時的に加護を受け、人の加護が消える。プロフェットの動きと彼ら、うまくかみ合ってくれてよかったよ」
彼が、打ち滅ぼした先代の魔王の骸を、氷結の魔法で保存していたのは知っていた。それを使って、魔への供給を行ったのだろう。
「……魔王が二人いたらさあ」
「うん?」
「かたっぽが人間を祝福して、もうかたっぽが魔を祝福して、平等になんねえかな」